イリオモテ島旅日記6

6日目(5月4日。曇り時々雨) 網取湾〜月ケ浜〜浦内川素行〜河口

本日も曇天。だが風はなく蒸し暑い。 昨夜はアダンに這い回るヤシガニの移動音らしきものを聞いたけど、疲労 が貯まってテントから這い出すことができなかった。

本日はのんびりスタートする。
風は穏やかで、リーフの中はうねりが入らない。
湖のような海を漕いだ。

まるまぶんさんの岩を過ぎたあたりで、シーカヤック2艇に会う。 手を振っていると、いきなり波が立ち上がり、一人がブレイスをいれて立ち直った。 軽く話すと祖内で、シーカヤックガイドをやってる人がアイランドホテルの お客さんをつれてガイドツアーをやっている途中だった。

西表島のシーカヤック情報を知りたかったので、夕方会う約束をして 一路、東へ。

西表島最大の川、浦内川の流れ込む湾内に入り上陸。 月ケ浜のビーチにあがり、シャワーとビールで文明を堪能し、 ヒルネに入った。

そこに川があると探検したくなるのは、川屋の性(サガ)だ。 観光船や、遡上カヌーツアーが盛んなこの川だが、夕方になり 静かになるかもしれない。奮起してカヌーで遡上を開始した。 船着場に到着した時は、日も傾き、最終の観光船が離岸する ところだった。

まよったが、まだ明かりがある。カンピレーの滝、マリウドの滝と ランニング観光と水浴びを決めて、夕闇迫る川を下った。

川にかかる河口の橋の袂に、カヌーを係留した。 夜遅くなってしまったけど、昼間であったカヤッカーとの約束は 果たしたい。 近くに乗り捨ててあったMTBを無断で借用して、祖内まで ナイトツーリング。久々に感じるスビード感、風が気持ちいい。 聞いていた家は、明かりがついていたので、玄関をたたくと 昼間のカヤッカーが怪訝そうな顔。

警戒されたようだけど、すぐに仲良くなった。 まるで、松田勇作のTV番組「探偵物語」のような渋い 暮らしをしているカヤッカーの名前は、篠田佐一さん。 兵庫県出身のシーカヤッカーで、数々の島渡り経験を持つ。 「フィールド・プレイヤー」というアウトフィッターを行なっている。

ここまで漕いできたこと。や、西表島のカヤックシーンのこと、 すっかりハナシがとまらない。

でも、こっそりチャリンコを借りてきたことを正直に話すと、 急いで返したほうが良いといわれてので、今晩はお暇することにした。

「明日は天気が悪そうだから、停滞になったら、くればいいよ。 夕方には、家に戻っているから」

うなずいた。機会があれば。こんな素敵な人とこんなに短い 邂逅では、もったいなさ過ぎる。

再びチャリダーとなって、車の通らない真っ暗な道路を疾走。 橋の袂から川におりて、カヌーのもやいを解いていたら、 懐中電灯に照らされた。

そこは遡上用のレンタルカヌーが係留してあるところだったので、 ボード小屋に寝泊りしている人が、物音がするので、 見に来たらしい。

よっぽどハイになっていたのだろう。あつかましいことに、 その人に、ちょっと話しましょうと声をかけて、 ボート小屋に入り込んでしまった。

その人は、よくみると女性で、小さな小屋には、西表島に関する図鑑 や書物がたくさんあった。 たちまち、意気投合していろいろ話す。 深夜までおじゃましてしまったが、女性の部屋に泊るわけにはいかない。 勧めを断って、真夜中にカヌーで出艇した。 かすかな月明かり。最初に乗り上げた浜に、すばやくテントをたてて 本日も泥のように眠りに落ちた。