餓鬼岳

(2647.2M)

マイナーな山を求めて

日程

昨年に引き続いて富山労山の募集山行に参加させて頂くことになった。どちらかと言えば都道府県最高峰を指向している私にとってこの方面は全く手付かずの山域で貴重な体験が出来ると考えた。餓鬼岳は隣の燕岳と比べて登山者が少なく静かな山行が楽しめるとの事。帰りに徒渉があるという話に多少不安になったが期待の方が大きかった。

7月27日 富山駅(06:00)餓鬼岳登山口(10:00)=最終水場(11:40)=大凪山(14:40)=餓鬼岳小屋(17:40)=餓鬼岳往復
7月28日 餓鬼岳往復=餓鬼岳小屋(07:30)=東沢岳(11:10)=東沢乗越(11:40)=中房温泉有明荘(16:15)富山駅(20:30)

山行記録

集合時間の五分前に富山駅に到着。我ながら上出来だが、もうほとんどの人が集まっていた。すぐにバスに乗り出発。途中、小谷で休憩して登山口へと向かった。林道終点まではバスが入らないとのことで、10分ほど手前の広場でバスを降りる。天気はまずまずで登りにはちょうど良い感じだ。

       
左:餓鬼岳登山口
右:白沢沿いの木道

餓鬼岳登山口で一度集合し、班ごとに分かれて出発する。すぐに視界が開けて植林された山肌が見えてくると白沢登山口の標識があり、林道は登山道に変わる。沢に向かって一旦下り、あとは沢に沿って歩く。道はかなり整備が行き届いていて、橋には手すり、歩きにくい所には木道が据え付けられている。休憩中にちょっと沢に入ってみたり、まわりの人達も元気そうだ。

             
左:魚止の滝
右:最終水場

紅葉の滝を過ぎたあたりから道は細く急になり、梯子や鎖が登場してくる。また、上から下山してくる人も現れ始めて速度が落ち、たちまち渋滞してしまう。おかげでゆっくり滝の写真を撮る事ができたので良しである。紅葉の滝も魚止の滝もすばらしい滝だが登山道から距離を置いて眺めると少々迫力に欠ける様な気がした。魚止の滝を巻き、再び沢を渡ったところで休憩。ついでに昼食にする。最終水場はそこからすぐだった。

       
左:大町方面、手前に登山口の植林地が見える
右:大凪山山頂

最終水場で一度全員集合し、大休止。つい今しがた昼食をとったばかりなのでタイミングが悪い。しかし本格的な登りはここから。最終水場から稜線直下のトラバース道まではひたすら九十九折りの急登で、今日のハイライトと言えるところだ。さすがにかなりコースタイムをロスし、サポートの人が先行して小屋に向かった。稜線の直下では上に向かう道が廃道になっているのでトラバース道からガレの急登を通ってゆく。ようやく下界の景色が見える場所に出る。尾根に出てからしばらく歩いてようやく大凪山に到着。展望はなく、看板が無ければ分からないような山頂だ。

         
左:餓鬼岳小屋と餓鬼岳
右:餓鬼岳山頂

とりあえず最初の難関は突破した。まだまだ行程の半ばであるがこのペースで行けば小屋までは大丈夫そうだ。それにしても樹林帯の登りは暑い。しかも事前に聞かされた通り虫が多くて閉口した。大凪山をあとにし、しばらくはゆるやかな樹林帯を歩く。やがて第二の難所、百曲がりの登りにかかる。大変ではあるが、樹林帯を突き抜け景色が広がってくると、疲れを忘れた。水平道に入り10分程で餓鬼岳小屋に到着。自分達の班が先頭だったので全員集合するまで休憩となった。


餓鬼岳小屋

休憩しているわずかの間にブロッケン現象が現れた。昨年に引き続き運がいい。班長さんに断って山頂へと向かう。小屋からわずか五分の登りだ。山頂には祠が一つ建っていた。展望はまさに360度。ただ、全体的に空気が霞んでいるのと、夕焼けの逆光であまりはっきりしない。翌日に期待して小屋に帰った。戻ってみると小屋は前代未聞の大混雑に大わらわになっていた。ビールが買えない。夕食後にようやくビール(発泡酒)を手に入れる事ができた。それで外で月を見ながら一杯やれたのは良かったのだが、寝場所の確保に失敗。結果、小屋の寝袋を借りて玄関で寝る事になってしまった。

  
左:立山、剣岳、針ノ木岳
右:餓鬼岳山頂

朝の三時に最初の登山客が小屋の人にタクシーを予約して出ていった。私も起きたが暫く横になっている事にした。空が明るくなるのを待って寝袋を片づけ、山頂に向かう。山頂からは一面の雲海から突き出すように山々が連なっている様子が見渡せた。戸隠、鹿島槍、針ノ木、立山、野口五郎、燕、槍、北岳、富士山、八ヶ岳、遠く噴煙を上げているのは浅間山だろうか。特に野口五郎を中心に裏銀座の山々が目立つ。

         
左:剣ズリ、北燕岳、槍ヶ岳
右:稜線を歩く

朝食の為、一度小屋に戻り、再び集団で山頂へ。さらに唐沢岳方面に向かうが、時間がなかった様で見晴らしの良い所から巻き道を引き返す。餓鬼岳小屋に寄って剣ズリに向け出発。まずは餓鬼岳を背にしながらの稜線歩き。剣ズリが近づいて梯子や桟道が出てくると眼下に高瀬湖、対岸には裏銀座の山々がどっかりと居座り、雄大な眺望を楽しむ事ができる様になった。登山道は剣ズリを西側から巻いてゆく。

         
左:剣ズリを巻き、急下降
右:剣ズリを振り返る

剣ズリを巻いてしまうと、今度は急激な下りが始まった。そのまま樹林帯に突入してゆく。坂が少し緩やかになった所にガレになっている崩壊地があり、そこを越えると再び樹林帯を下り始める。鞍部まで下りてしまうと再び気持ちの良い稜線歩きとなった。時間的にそろそろ東沢岳に着いても良さそうだったが、その手前には二つほどピークがあり、うまくだまされて思いのほか疲れる事になった。東沢岳にはコースタイムより30分遅れで到着。周囲の眺望ともここでお別れだ。名残を惜しみつつさらに東沢乗越に向けて山を下ってゆく。


中房川沿いの道

東沢乗越に団体が留まるだけのスペースはなく休憩もそこそこに先を急ぐ。九十九折りの急な登山道をひたすら下りてゆくとやがて坂道も緩くなり西大ホラ沢出合に出た。ここで昼食、小屋の弁当(おぎにり)を食べる。ここからしばらくは沢沿いの道になるようだ。二、三回飛び石づたいの渡渉をし、へつり、堰堤を越え、一つ一つ慎重にこなしてゆく。水量が少なかったので、問題なく通過できた。かなり登り返しのある大高巻きを越え、「おいしい水」の看板がある支沢で休憩となる。ここから先は沢沿いの巻き道が一カ所崩落しているが最後の吊り橋を越えれば道も平坦になり中房温泉に出る。全員の集合を待ってからバスで有明荘へと向かった。

余談 マイナーな山とは言え、この時期、この山域となれば混んでいても不思議はない。しかし、小屋が混んでいた割に登山道が閑散としていたのは不思議だ。
沢の水量は絶妙で、景観を楽しみつつ行程をこなす事ができた。もし雨にやられていたら全く違う登山になったと思われるので大変恵まれていた。
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