桴海於茂登岳・前嵩

(477.4M−263.2M)

息詰まる緊張・・いや、暑いだけか

日程

実際、当初は何とも思っていなかった山が計画を固めてゆくに従って主目標になってしまうことがある。今回の沖縄計画の桴海於茂登岳がそうだ。わずか標高477M余りの山だが、沖縄県第三の標高を持つ。この山には登山道はなく、「熱汗山脈(高橋敬一著)」では荒川を詰めて登っている。平野に雪の降り始める12月、近くの笹津山を桴海於茂登岳に見立てて沢登りを行った。ハブについてもいろいろ調べた。とにかく無理をしないことだけ考えて山に入る事にする。

1月2日

石垣市内(07:40)米原ヤエヤマヤシ群(08:50)=桴海於茂登岳(11:30)=米原ヤエヤマヤシ群(13:50−14:20)前嵩(14:50−16:00)桃林寺観音堂(16:50−17:30)石垣市内(20:00)

山行記録

ホテルで朝食を食べ、時間を見て出発した。体が自然に緊張する。今日の為に沖縄に来たのだ。米原ヤエヤマヤシ群の駐車場に入ると既に何台か車が停まっていた。ちょっとゆっくりしすぎたか。さっそく着替えにかかる事にする。今日の格好は冬用ヤッケ上下、革手袋、首にタオル、帽子は二重にしてスパッツも装着。ハブ対策として効果があるのか自信はないがこんなものだろう。石垣島に突如現れた冬山男(ピッケル、アイゼンは持ってないけど)は、周囲の目を避けるようにして山の中に入っていった

  
左:米原ヤエヤマヤシ群への入り口
右:展望台(三角点)からの景色

「熱汗山脈」のルート図での下山路は米原ヤエヤマヤシ群の三角点あたりを終点としている様に読める。三角点を出てヤブに突入するが、跳ね返されて隣の畑に入ってしまった。見ると山に向かって金網のゲートが立っている。入ると悪いような気もしたが、ゲートを越えて中に入った。やがて導水管が現れ、沢に出合う。この沢を詰めれば桴海於茂登岳まで行けるはずだ。沢の水量は少なく、登山靴でも十分歩くことが出来た。

       
左:前嵩方面
右:琉球政府の三角点

富山では適度な服装も、ここ沖縄ではかなり暑い。バテないように精一杯ゆっくり歩く。滝は二段で10M以上のが一つそれ以下が三つ程あり、すべて巻いて越える。一カ所だけ木の幹に飛び移る場面があり、相当危険だったがなんとか乗り越えた。一時間少々で沢は消えて樹林帯からヤブに突入する。かなりの急斜面だ。カヤに掴まりながら登る。手を離すと落ちそうに感じて全力を出す。そのとき突然、前をネズミが走っていった。一瞬心臓が止まる。ハブかと思った。

  
左:於茂登岳
右:底原ダム

山頂部に着いてもヤブが濃く、三角点を探すのに一苦労した。山頂からの展望は当然見込めないので於茂登岳の写真ぐらいは撮りに行く。昼食を食べ、休憩もそこそこに往路を下った。ヤブ山なので地図と磁石だけが頼りだ。真下に米原の海岸線がせまっており、びびって真っ直ぐ降りられない。左に向かえば沢に合流するはずなので進路をずらしながら歩いた。やがて樹林帯に入り沢に出合う。後は往路と同じようにして歩くだけだ。再び導水管が現れたとき、ようやく緊張を解く。沖縄計画は成功だ。


米原のヤエヤマヤシ群

駐車場でいったん着替えた後、せっかくなのでヤエヤマヤシを見に行く。カメラに入らないくらい背が高くて見事だったが、群落というほど一面に生えているわけでなくあちこち点在しているといった格好だ。近くには貧乏神神社なる怪しい神社があったのだが、成功に酔っている私には何の神でも来いで感謝の祈りを捧げるのだった。

  
左:前嵩から底地ビーチ
右:同じく屋良部岳

まだ時間が早いので、予定になかった前嵩を登りに行く。登山口には鎖のゲートがあり、少し離れた脇道に車を停めた。中に入ると初めちょっとした広場になっているが、やがて谷筋に沿った登山道になってゆく。急なところは於茂登岳と同じくコンクリートで固めた階段になっていて歩きやすい。登山道はやがて稜線に達し、そのまま道なりに歩くとアンテナ施設のある隣のピークに出た。西側の見通しがよく、眼下には養殖場の囲いが見える。続いて稜線を折り返し、前嵩山頂に向かう。ペンキの目印に従い登って行くとやがて三角点の山頂だった。カヤの背が高いので三角点の上に乗ってようやく頭を出す。崎枝湾から川平湾にかけての風景が一望できた。下山は往路を戻る。今日は有意義な一日だった。


同じく於茂登岳方面

昨日に続いてまたも桃林寺観音堂に参った。お賽銭を景気良く投げ入れ、無事の下山を感謝する。夕食は当然、石垣牛のステーキ。いかにも和牛な味で満足。明日は西表島観光だ。ゆっくり休むぞ。

余談

気温は富山で言うと十月くらいだろうか、あの格好はさすがに暑かった。
山頂部のヤブはかなり濃く、直線で400メートル程の距離なのだが進むのに一時間半もかかった。

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