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白馬岳(2932m)・杓子岳(2812m)・鑓ケ岳2903m)
登り―大雪渓 下り―鑓温泉経由
長野・富山 | 2015.08.06~07 | 単独 | 白馬岳 一等三角点 鑓ケ岳 三等三角点 |
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コース | 【1日目】 猿倉駐車場(4.00)---白馬尻(5.05-5.10)---雪渓取付(5.15)---雪渓上部(6.40-6.50)---小雪渓(7.50-8.00)---避難小屋---村営宿舎(9.00-9.15)---白馬山荘(9.45-10.10)---白馬山頂(10.30) 山頂周辺の高山植物観賞散策 【2日目】 白馬山荘(4.00)---丸山(4.35)---杓子岳(5.25-5.35)---鑓ケ岳(6.30-6.40)---分岐(7.05)---大出原(8.05-8.10)---鑓温泉(8.50)---最初の雪渓(9.00-9.10)---杓子沢雪渓(9.55)---サンジ(10.15)---猿倉(12.50) |
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所要時間・含む休憩 1日目 6時間30分 2日目 8時間50分 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
10年ぶりの白馬岳。天候を確認した甲斐あって、まずまずの山行となったが、脚力の衰えは覆いようもないことを確認する登山でもあった。歩行グレードとしては、1週間前の光岳を上回っていたと思う。
【一日目】 白馬尻小屋から雪渓右岸の夏道を10分ほど登ったところで6本爪アイゼンを付けて雪渓に乗る。この雪渓でアイゼンを使うのは初めて、ときにはジョギングシューズで上り下りした。歳を考えて今回は慎重に対応。ザラメ状の雪面は、氷ったようにコチコチ。黒っぽく汚れた一筋のルートを伝って行く。スプーンカットに脚を置いて行けば滑る心配はない。
氷室に入っているように気持ちいい雪渓は、長さ3km、高低差数百mほどとのこと。雷を用心して午前中には山小屋へ入りたい。よほどのんびり歩いても間にあうだろう。マイペースで高度を上げて行く。絶えず崩落を続けている杓子岳からは、落石の不気味な音が幾度となく聞こえてくる。雪上の不安定な石も、雪が弛むと転石となる可能性がある。気をつけないと・・・。前方稜線の上には紺碧の空、しかし気温の上昇で霧が上がってくるだろう。過大な期待は禁物。 雪渓上の登攀は1時間余で終了。左岸岩場の道へ上がると、すぐ先が避難小屋。順調すぎてこのままでは小屋着が早すぎる。雪渓対岸の荒々しい杓子岳の姿をカメラに収めたり、また水の流れる岩道沿いに咲き乱れる数々の高山植物に目を惹きつけられる。脚を止めてはカメラのレンズを向ける。 ミソガワサウ マルバダケブキ オニシモツケ オオバミズホウズキ ミヤマキンポウゲ ヤマハハコ ミヤマカラマツ キヌガサソウ ハクサンフウロ ミヤマクワガタ オンタデ ミヤマダイモンジソウ シロウマアサツキ、イワオオギ・・etc. 目につく品種ごとに、忘れないよう立ち止まってはアングルを考え、カメラに収めるのは、時間つぶしにちょうどいい。 雪渓を離れてから避難小屋まではわずかの距離。このあたりから下ってくる登山者の数が多くなる。ご来光を楽しんでから降りてきたのだろう。どうやら今朝の展望は満足のいくものだったようだ。途中で出会ったネーチャーボラのおじさんと立話。手帳を見ながら花の名前を教えてくれる。私の知っている花もかなり含まれているが、まじめに耳を傾ける。
白馬山頂付近には二つの山小屋がある。山頂直下の白馬山荘と、稜線からちょっと下がった村営頂上宿舎。泊まったことのない山頂直下の白馬山荘へ泊まることにした。到着は9時45分、受け付けは11時から。荷物だけ置かせて貰もらい山頂へ。花を観賞しながらのぶらぶら歩き。ミヤマタンポポ、オンダデ、ウルップソウ、クロトウヒレン、シロウマアサツキ、ハクサンボウフウ、ハクサンシャジン、イワオオギ、ヨツバシオガマ、ミヤマダイコンソウ、コマクサ・・・・書ききれない。 山荘から20分ほどで山頂。標柱は多分5年前と同じもの、鉄製の展望盤はすり減って読むことは不能。6回目となるピーク付近でしばしの憩い。東から、西から、次々と登山者が到着する。中にはメロメロの足取り、手を出したくなるような青息吐息でたどり着く姿、その方は今日の白馬岳登頂の記憶を生涯忘れないことだろう。到着した人たちは順番に「白馬岳山頂」標柱の前に立ち、晴れ晴れとした顔でカメラに収まっていた。 予想通りガスが上がってきて四周の展望はなし、目の前の旭岳が見えるのみ。山頂付近でしばらく時間をつぶしてから小屋へ戻った。 小屋は思ったほどの混みようではなく、比較的ゆったりとしていたのはラッキー、しかし明日からはお盆の週入り、年間最大の混雑が何日か続くことだろう。
昼間の空模様からは、日没時の夕景に期待はしなかった。ところが次第に雲が切れ、杓子、鑓ケ岳などが見え始めた。そして遥かに剣岳のシルエットまでもが、かすかに浮かんできた。夕映えを受ける杓子、鑓が絵になる。旭岳の右肩には太陽が火の玉となって沈んで行く。天気が良いと日本海までも見えるだろう。残照は、期待するほどの夕焼けを見せずに幕を下ろしたが、これだけ見られただけでもラッキーなサンセットショーと言うべきか。 部屋は1室6名(定員8名)。私以外は栂池ロープウエイから白馬大池で一泊、2日目に白馬岳といういちばん楽なコースの人たちだった。私の年齢を知ってみんな驚いた風だった。 標高3000m近い山荘の夜はさすがに気温は低い。平地より15℃くらいは低いはずだ。綿入りの布団をかけてちょうど良しの感。
【二日目】 未明4時、山小屋を出発。懐中電灯を照らしながら丸山経由杓子岳へ向かう。 星がまたたいている。夜明けの展望が期待できそうだ。コルから丸山のピークへ登り着くころには懐電も不要、東の空にかすかな赤みが兆し始めた。丸山からいったん下降、杓子岳へ向かう。特徴ある白馬岳のピークが黒いシルエットで夜明けを待っている。
高山植物が確認できるほどに明るくなってきた。巻き道を見送って杓子岳ピークへ。歩きにくいガレ石に加えてかなりの急登、無秩序に敷き詰めた砕石の上を歩いているような感じだ。それでも踏跡は確認できる。丸山との最低コルから高低差250mほどを登りきると杓子岳山頂。妙高~高妻山の間から太陽が上がる。素晴らしい夜明けのドラマにしばし目が吸いつけられる。東方には浅間、戸隠、妙高、火打、焼山・・・。南方遥か霞のように浮かんでいるのは八ケ岳方面だろうか。 夜明けのドラマと展望に満足して杓子岳を後にする。南北に延びた杓子岳平坦の稜部を南下したあと、急勾配を下って行くと巻道に合流。コルから再び勾配のきつい白馬鑓への登りに取りつく。高低差200m余、途中でイワヒバリが足元から飛び立った。すると近くでピーピーとヒナの声。飛びたったのは親鳥?心配して近くで見ているだろう。ヒナは岩の上にのってしきりに親を呼んでいる(残念ながら写真に失敗しました) 花の写真を撮りながら、杓子山頂から1時間、白馬鑓ケ岳へ登り着く。多少脚は重い気がするがまだまだ大丈夫。 好天に恵まれた山頂から、白馬岳を振り返り、そして北アルプスの遠望に見とれたあとは、日本一高所の温泉として知られる鑓温泉経由の長い下りが待っている。
天狗山荘手前の道標から稜線と分かれて下降していく。以前この道を下った時、アップダウンを交えて延々とつづく道に、ほとほとうんざりした記憶がよみがえってくる。今日もまたその思いを味わうことになるだろう。 稜線からの下り勾配はけっこうあるが、最初は歩きやすい道。花も多く気分は爽快。大雪渓から白馬岳周辺では見られなかった新しい花々が目につくたび、脚を止めてカメラのレンズ向ける。花を髭に変えたチングルマが一面を埋めている。花の時期はさぞ見栄えのすることだろう。緑濃いウラシマツヅシもお盆過ぎると紅葉を始めるかもしれない。昨日見られなかったセリバシオズマやコバイケイソも咲いている。 大出原の湿原はまさに花盛り。休憩を兼ねて花々を観賞。ハクサンコザクラ、チングルマ、アオノツガザクラ、コイワカガミ、ミヤマホッツジ、ヤマハハコ・・・ 高山へ登る大きな楽しみは、やはり高山植物だが、老化とともにとっさに名前が出て来ないのが情けない。
大出原から45分下ってようやく鑓温泉。稜線から下り始めて1時間55分、猿倉までの3分の一に過ぎない。これからが本番の下り、気を引き締める。鑓温泉は、管理されている温泉としては知る人ぞ知る全国高所一位の温泉である。前回は話のタネに入ってみたが、今回はパスというか、体力的にその余裕はない。 鑓温泉からちょっと下ると雪渓のトラバース。先方から来た登山者はノーアイゼン。アイゼン装置の手間が省ける。雪渓脇の流れで休憩。 雪渓の厚さは2m~3mほど、雪渓へ乗るためにスコップで足場を切ってある。雪渓の対岸近くまで水平に進んで、それから真下へ降りて行く。下りの方が気を使う。 この後2回の雪渓トラバースがある。怖れることはないが慎重さは必要。滑って加速でもついたら絶対に助からない。最後の雪渓、杓子沢を終わるとほっとする。 無事3つの雪渓をクリアしてからあと、残りの行程がとにかく長く感じる。 ときどき花が気分を紛らわせてくれるのがうれしい。イワイチョウ、オオバミズホウズキ、トリアシショウマ、ホタルブクロ、シモツケソウ、イチリンソウ、ワタスゲ、キンコウカ・・・高山というより、高原の花々だ。このルートの良い所は水場が何カ所もあること。これがなかったらかなりつらいだろう。脚も重く、歩き飽きたころ、ようやく歩きやすい道となって一息抜くことができる。 やがてブナの大樹が目にとまるようになると林道は近い。 稜線分岐から林道まで、高低差約1500m、6時間の行程は長かった。仮に大雪渓なら同じ高低差を2時間かからず下ることができる。まさにうんざりする下りだった。苦しみもまた山登りの楽しみ・・・ということ。
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