いよいよ信越トレイル最後の第6セクション。
伏野峠から天水山へ北上するか、あるいは天水山から伏野峠へ南下するか、その選択が問題。
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雨池三等三角点 |
▼前回の第5セクション(伏野峠~関田峠)のとき、飯山線西大滝駅から伏野峠までの、あまりにも長い車道歩きが(3時間余)トラウマとなっていて、もうあのうんざり歩きは金輪際したくない。ということで選択肢は飯山線宮野原駅をスタート、天水山から伏野峠へ南下するコースに決めた
▼未明、FIFA日本対デンマーク戦をラジオで聞きながら伏野峠へ。車はこの峠へデポ、積んできたマウンテンバイクで飯山線桑名川駅へ、高低差700メートルを駆け下る。途中小さな登りがいくつかあるが距離13キロ、風をきって約40分で桑名川駅に到着。こざっぱりとした無人駅。マウンテンバイクは駅前に駐輪して6時37分発十日町行に乗車、乗客は私一人だけ。5つ目の森宮野原駅下車6時58分。
▼駅舎を通らずホームから線路の北側へ出て、小集落の中を西へ向かうと117号線に出る。右折して117号線を何歩か歩
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天水山山頂 |
三方岳山頂 |
くとすぐに右手に健森田神社の赤い鳥居が見える。神社の左手に延びている舗装された農道を行く。背後に苗場山や鳥甲山、それに佐武流山と思える山影が見えてくる。田植えを終わったばかりの棚田の中、曲がりくねった道をひたすら上へ上へと進む。背後に俯瞰する眺めはなかなかのものだ。
やがて田圃もなくなり、駅から45分ほど歩いたところで溜め池があらわれる。その先に天水山への道標が立っている。直進する道と分かれ右折すると、下から上がってくる別の車道と合流、道標が天水山を案内している。そこには国地院地図にも載っている二つの池がある。
舗装された道がさらに先へと延びている。二又分岐があるが、ここは良いほうの右の道を選ぶ。
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深坂峠 |
左に急角度で折れる分岐地点、道標もあり左の上り坂の道へ入って10分。少し広くなった場所でここが登山口ということになる。駅からの所要1時間35分だった。車だとここまで進入可能だろう。たたじ駐車スペースはせいぜい2、3台か。
▼道標にしたがって赤土の幅広の道を上って行くと、土手にぶつかる。右手奥に延びる平坦な水路がある。考えもなくその水路に沿って進んだら行き止まりになってしまった。土手のところまで戻ってみると、土手正面に夏草に覆われてわかりにくいが踏跡があった。土手の上へ出るとしっかりした道となり、この先は何の不安もないしっかりした道になる。
雪圧のために幹を地べたに這わせたブナが豪雪の様子をうかがわせる。ニガナだろうか、黄色い野草が彩りを添えている。天に向かって大きく枝を広げたブナは、新緑が初々しく透過光線となって降り注ぐ。ヤマツツジの朱も鮮やかだ。
▼三等三角点の小ピークに立つ。点名は雨池、ここでは雨池山と呼んでおこう。展望もなくただ三角点標石があるのみ。休まず先へ進む。なぜか今日の発汗は異常だ。帽子のひさしからぼたぼたと滴が落ちる。脚筋肉の疲労もこの段階でかなり気になる。コースはこれからが本番だというのに。
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ミズバショウ |
ブナの美林がますます良くなってきた。疲労感を癒してくれる。みごとな大木もある。クマの糞と思われる残滓もときどき目にする。大巌寺高原方面への分岐を過ぎ、山ツバキなどを目にしながら天水山へ到着。山頂には大きなブナが何本も聳えている。展望はない。正確にはここ天水山から斑尾山の山頂までが“信越トレイル”ということになっている。
▼天水山から先は、小さなアップダウンが繰り返す。疲労の進行が実際以上にそれを強調して感じさせる。ボディブーローのように体力消耗を進める。適当なところで下山したい誘惑におそわれるが、伏野峠まで行か着かないとデポした車が拾えない。
▼三方岳の二等三角点へ到着、地図を見ると天水山~伏野峠間の3分の一というところか。まだまだ先は長い。
登山道は相変わらず明瞭、足元にはイワカガミの群落が何ヶ所もあらわれる。アップダウンの小さな登りでも足はスムーズに上がらない。困ったことだ。これくらいの山だったらほとんど水は飲まずに歩ききってしまうのに、この大量の汗、飲まずにはいられない。
ブナ林を抜けて湿原状の小さな草地に出る。足元の土を見るとタイヤ痕らしいものがある。モーターバイクだ。どうしてこんなところまで・・・・まさに気ちがいヤタローだ。
▼湿原を横断してなだらかな道をたどると舗装道へ出る。右へ数十メートル行くと大きな自然石に深坂峠と彫られた碑がある。越後三山や丹後山が見える、はるかに日本海方面もかすんでいる。芝生のような気持ちの良い空間だ。居合わせた人と数分立ち話をして先へ進む。
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ブナの大木 |
▼藪影のところどころに残雪が見え隠れする。沢状の残雪にはミズバショウが咲いていた。
次のポイント『入道』の三角点までは早かった。三角点のある小ピークながら山名はない。ここは仮に入道山としておこう。
この小ピークも展望はない。写真だけ撮って先へ進むと、すぐに車道へ出てここが野々海峠。地図を見ると天水山から半分近く来ているようだ。道標にも伏野峠まで6.6キロと表示されている。少しだけほっとした気分になる。
▼ブナ林は相変わらず途切れることなく、爽やかなその新緑は実にいい気分、ブナの癒し効果は抜群だ。
深坂峠を過ぎてからはアップダウンが小さくなった気がする。小さな上りは何回もあらわれるが、前半ほどのことはない。実際に地形がそうなのか、あるいは脚に多少元気が蘇ったのか、よくわからない。
観測点らしい標石とゴンドラ山頂駅方面という道標のところで通過時刻をメモ、その先のブナ林の日かげで昼食休憩とする。メモをなくしているのに気づく。探しに戻ろうかと思ってはみたものの、疲れた脚がそれを許さない。いつもならさっさと戻って探すところだ。
地図も一緒になくしたようだ。天水山までは別メモに時刻を記していたが、そのあとは記憶をたどるほかない。しかし正確には思い出せない。
▼地図がなくなってみると、伏野峠まであとどのくらいか気になる。知りたい。地図の記憶をたどるが、行程はもうそれほど残っていないはずということしかわからない。
道標に須川峠まで1.1キロの表示。水は1リットルしか携帯しなかった。残り少ないが喉の渇きに勝てず須川峠で休憩かたがた味わいながら飲む。美味い。
▼ゴールの伏野峠はもうすぐ、小さなアップダウンを何だこんな坂で重い足を運び、照岡三等三角点のあることを忘れて確認することなく伏野峠へ降りてしまった。
▼これで信越トレイルを1メートルも残さず完全につなぎ終わることができた。
気温も高く、おまけに湿度も高いむしむし陽気、それほど体力を要する山とは思えないが、消耗度の厳しい一日だった。止めておいた車で飯山線桑名川駅へ立ち寄り、マウンテンバイクを回収して帰宅の途へ。シャワーと冷えたビールを思い浮かべながらの運転だった。
展望にはあまり恵まれないが、コース全般に広がるブナ林の美しさを評価して、6つのセクションの中では今日の第6セクションが一番気に入った。
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