伊那谷 千本立=せんぼんだち(1466m)

2006年度のテーマは『伊那谷の山』です。1月に8座、今回3月は下記の12座を登ってきました。対象の山は国地院二万五千図を参照にして選定。等級を問わず三角点の表示があり、かつ地図から推測するとピークを有して存在感がありそうな山、それと三角点はなくても山の名前が記載されて一般に認知されていると思われる山を選びました。地域は伊那谷南部の平谷村・売木村・阿南町です。

長者峰 高嶺 東方子 桐山 源四山 梨木山 千本立 桐ノ木山 高畑山 岩倉山 鎌根山 大津山
長野県 2006.03.27 単独 マイカー 千本立 三等三角点 地図 平谷北西
コース ネスティビ・キャンプ場先のゲート(6.00)−−−山道へ(6.20)−−−千本立西南西ピーク(7.10)−−−千本立(7.40-7.45)−−−林道経由−−−駐車ゲート(8.35)
西南西ピークから望む千本立と、薮の中に隠された三等三角点標石
平谷の信号を418号線売木方面へと入り、ネスティビ・キャンプ場の看板で左折する。1キロほどでキャンプ場となり、その先で進入禁止のゲートがある。ここで車を止めて歩きはじめる。この付近は治山か行楽目的かわからないが工事の最中のようだ。
ゲートから20分ほど歩いて、左にヘアピンカーフする地点、大きな石がいくつかあるところを右手の沢へ入って行く踏跡がある。地図に載っている登山道らしい。林道を歩くのも芸がないのでこの踏跡へ入った。ところがこれが大失敗だった。

はじめのうちこそ踏跡はそこそこ辿れたが、それはつかの間、ルートはほとんど分からなくなってきた。歩きやすそうなところを選んで、沢の右岸、左岸と渉りながら登って行く。夏ならいざ知らず、この時期道もない沢を遡上していくにはかなり勇気がいる。右手に一本の尾根の張り出しを見て沢を離れることにした。
尾根なら何らかの踏跡くらいは期待できると思ったが判断は甘かった。急登の尾根は潅木の薮と笹薮を繰り返すが、登りだしてしまえば引き返す気持ちにはなれない。主尾根へ登りつけば何とかなる。そう思って薮こぎを強いられながら強引に登って行った。それにしても昨日から薮こぎの連続、いいかげん辟易としてくる。
汗びっしょりになってひたすら登りつづける。小さく下ってからさらに登り返す。沢沿いの山道へ入ってから50分、思いもしなかった厳しい登りだった。林道を敬遠した判断が悔やまれる。ようやくという思いで主尾根らしい小さなピークへたどりついた。主尾根にはいくらか道らしい感じが見えるのでほっとする。前方にこんもりとした三つのピークが見える。高さはどれも似ている。どれかが千本立らしいが特定できない。まだかなり距離がありそうだ。間には一面の笹原が斜面を埋め尽くしている。やれやれまた笹薮こぎか・・・。こんもりピーク直下には林道が確認できる。林道を使えばこんな苦労はなかったはずだ。読みが甘かった。
気をとりなおして、獣道か人間の踏跡か不明な道をいったんコルへと下る。

広がる笹原の中にブナの大木がまばらに点々と立っている。笹の中は、道形らしいものがほとんど確認できない。それらしいものは動物たち通うけもの道にちがいない。わずかに湿り気を帯びている笹だが、いつの間にかズボンから手袋からびしょ濡れ、シャツも汗でびしょびしょになっている。
押し分け掻き分け一歩づつのしんどい登りがつづく。ところどころ雪の残っているところがあると天国だ。林道にさえたどりつけば・・・、その思いだけでようやく笹原を登りきった。そこは三つのピークが見えた真ん中ピークの西面にあたる林道だった。地図を見てこれが千本立三角点と見当をつける。ピークはすぐのようだが、もう笹を漕ぐのはたくさんだ。ピーク北斜面なら残雪があるかもしれない、そう思って林道を北へ移動すると思ったとおり雪に覆われた斜面があった。これなら楽々登れる。雪を踏み、数分で山頂に達した。ちょっと探しただけで薮の中に三等三角点が見つかった。ここにも山頂標識の類は皆無、潅木の枝に三つほど赤テープなどがつけれられているだけだった。

林道をたどればどうということのない山だろうが、苦労した行程を思うと私にとって一入感慨の残る山となった。
冷たい風に吹かれて、汗で濡れた体が急速に冷えてゆく。濡れた手袋で指先がじんじんと痛くなってくる。急いで山頂をあとにした。
登りにせっかく残してきた赤布だが、帰りは林道をたどった。ところどころ崩壊して車の通行は不能だが、これを歩けば千本立はピクニック同様の山となってしまう。冷え切って痛みを感じる指先は、結局自動車まで帰って着替えるまで治らなかった。
 
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