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伊那谷 せいきらし山=せいきらしさん(1292m)

2006年度のテーマは『伊那谷の山』です。2月に8座、3月は12座、そして今回は下記の11座を登ってきました。対象の山は国地院二万五千図を参照にして選定。等級を問わず三角点の表示があり、かつ地図から推測するとピークを有して存在感がありそうな山、それと三角点はなくても山の名前が記載されて一般に認知されていると思われる山を選びました。地域は伊那谷南部の阿南町・天竜村です。
向山 新野峠山 峠山 天ケ森 とうじあげ山 西峰山 上黒田山 せいきらし山 丸山 木曽峰 弁当山
長野県 2006.04.25 単独 マイカー 三角点なし 地図 平谷北東
コース 心川(6.10)−−−一軒家(6.30)−−−薮こぎ−−−せいきらし山(8.30)−−−一軒家で10分話し込む−−−心川(9.50)
せいきらし山の頂上

阿南町和合の山。丸山と間違えて密藪との戦い。

丸山(1484m)へ登るつもりだったのに、とんでもない錯覚をしてしまった。地図を見て登山口は慎重に確認したし、しかも地図には明瞭な登山道表示もあって間違えるなんて思いもしなかった。
下山して来るまで何がなんだかわからなかった。

国道151号線から県道46号線へ入り、さらに下日影付近で和合方面へ分岐して西へ向かう。やがてU字ターンするところで左は鈴ケ沢、右は和合小分校への分岐、左の鈴ケ沢方面へ向かう。目印に考えていた橋を渡る個所がカーナビに映った。てっきりここが登山コースの入口と早合点してしまった。鈴ケ沢から入山することにしていたのだが、ここがその地点であると信じ込んでしまったのだ。ここは心川集落の少し先で、鈴ケ沢はまだまだ先だった。

橋の手前、共産党の広宣掲示板前の空き地に駐車して出発する。所要時間は2時間そこそこと踏んでいた。しばらく沢沿いの林道をつま先上がりに上って行く。養魚場施設の先で道は二分する。地図を見るがよくわからない。何となく右の道をとってしばらく行くと車道は終点、こんな山中に一軒家がある。実際に住んでいるようだ。コースに間違いがないか確かめたくて開け放しの玄関から声をかけるが応答はない。民家の背後に見えているいちばん高いのが丸山だろうと推測して、民家の裏から山へ入って行った。
ところが道がない。おかしいと思いつつ薮で歩きにくい尾根を登って行く。すると竹林に突き当たってしまった。竹林を縫うようにして進むが、倒れた竹が行く手をふさいで進行もままならない。やっと竹林を抜けると次に待っていたのは笹の密やぶ帯だ。正規のコースでないのはまちがいない。しかしあの見えていたピークさえ目指せば何とかなる。丸山はたかだか1500メートルの山という見くびりもあった。

ときどき笹の上に頭が出るのでおおよその方向感はつかめるから不安はない。ただ絡み合う笹を両手で分けながらの全身運動は並大抵の労力ではない。手袋もなしの両手は早くも擦り傷だらけ、顔にも枯れた笹が刺さって血が出たりと、とんでもないことになってきた。家庭内暴力か虐待にでもあったようだ。

悪戦苦闘の末林道へ飛び出した。今は使われている様子はなく廃道らしい。気がつくとポケットに入れていた大事な地図がない。薮の中で落としたようだ。地図がないと皆目わからいない。不安が広がるがここまで苦労したのに引き返す気にはなれない。帰りのためにここに赤布を残して、林道跡を西へ向かう。すぐに道型は消えてかすかな獣道へと変わり、やがて薮に行く手を阻まれる。ここは北側の稜線へ強引に登るより仕方ないと判断、両手で薮を押し分けその隙間を体を通すという作業で何とか急斜面を登り終わって稜線へ達した。すると明瞭な踏跡がある。あとはこの踏跡をたどって西へ進めば目指す丸山だと喜ぶ。帰りのためにここにも赤布を残す。

気がついたら手にあるはずのストックがない。どこへ落としてきたのか、それも気づかないほどやぶ漕ぎに夢中だった。疲れ果てた体に一服入れてからピークへの登りに取り付く。
たいした登りではないが全身運動で疲れがひどく、一歩一歩がつらい。この先ここより高いピークらしいものが見えないところで三角点を探すが見つからない。丸山ではなかったのだろうか、しばしポカンとして周囲を見回す。このピークには朽ちかけた大木の根株がで〜んと居座っていた。
念のためにこの先のコルまで足を延ばし様子を見る。もし神社があればこれが丸山に間違いはない。しかし神社はなかった。キツネに鼻をつままれたような気持ちで引き返すことにする。

あれほどの密薮も下りは問題にならないほど楽だ。残した二箇所の赤布も役に立った。落としたストックは薮の中に運よく見つかったが、地図の方はわからずじまいになってしまった。
一軒家まで無事下ると住人がいた。お爺さんに一部始終を話すと、丸山とはぜんぜん違うという。丸山の登山口などを詳しく教えてくれた。私が登ったこの山は、今では道もなく地元の人も登ることはいという。ここでは昔から「せいきらし」と呼んでいるという。その意味はお爺さんも知らなかった。麓から見るとはっきりとしたピークを有する山で、あとで地図を確認すると西峰山と丸山をつなぐ稜線上の1292メートル標高点のピークがこの山であることがわかった。

疲れ果てて、このあと高低差500メートルの丸山を登る元気はなく、一休みしてから楽な西峰山を登ることにした。

 
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